接骨院(整体院)のM&Aマーケット
接骨院(整体院)の承継対策についての現状意識化
帝国データバンクの調査によれば、全国・全業種の約52%の企業が「後継者がいない・未定」と回答しており(※1)、とくに中小規模の店舗を中心に承継対策の遅れが目立ちます。
接骨院の場合、柔道整復師の高齢化が進む一方、後継候補がいない院も多いのが実情です。さらに、競争の激化や人件費・光熱費の上昇により、廃業や倒産が増加傾向。2025年上半期には「マッサージ業・接骨院等」の倒産が過去最多の55件に達しました(※2)。こうした背景から、「家族に継がせる」よりも第三者承継(M&A)で院を残す動きが広がっています。※1 出所:帝国データバンク「全国企業『後継者不在率』動向調査」(2024年)※2 出所:東京商工リサーチ「マッサージ業・接骨院等の倒産動向」(2025年上半期)
接骨院(整体院)のM&Aの現状
今、整骨・整体業界では第三者承継(M&A)による再編が急拡大しています。
人手不足や競争激化を背景に、事業会社・投資会社が積極的に参入。
地域密着の小規模院を買収し、グループ化・チェーン展開を進める動きが広がっています。
- 個人院の後継者不足
- 事業会社・投資会社がM&Aで参入
- グループ展開・ブランド統合
- 経営安定・サービス向上・雇用維持
接骨院(整体院)M&Aの特徴
接骨院(整体院)のM&Aでは、売り手・買い手の双方にそれぞれ次のようなメリットとデメリットがあります。
売手側
✅ メリット
- 院を残し、患者さまへの施術を継続できる
- スタッフの雇用を維持できる
- 売却によってまとまった資金を得られる
- 相続・事業承継の準備を進められる
- 経営の負担や事務処理から解放される
- 譲渡後も柔道整復師として働き続けられる
- グループ経営の支援で院の発展が期待できる
✅ デメリット
- 買い手探しや条件交渉に専門知識が必要
- 引き継ぎに一定の期間と対応が必要
- 経営方針など、相手との相性が合わない場合がある
- 経営状況によっては譲渡が難しい場合もある
買手側
✅ メリット
- 実績のある院を引き継げる
- 集客基盤をそのまま活用できる
- 経験豊富なスタッフを確保できる
- 施術ノウハウを短期間で取り入れられる
- 新エリアへの展開がしやすい
- メニュー拡充やサービス強化につなげられる
✅ デメリット
- 適切な譲渡先を探すのに時間がかかる
- 条件交渉に専門知識が必要
- スタッフや方針の調整が必要になる
- 地域特性や経営スタイルが合わない場合がある
接骨院(整体院)のM&Aでは、買い手探しや条件交渉、譲渡後の運営などにおいて、専門的な知識や通常の開業とは異なるノウハウが求められます。多くの院長にとってなじみの薄い分野であり、難しく感じられることもありますが、上記のとおり、売り手・買い手の双方にとって、M&Aによるメリットはデメリットを大きく上回ります。
M&Aしやすい接骨院(整体院)
M&Aを成功させるには、院の状態(条件)と譲渡のタイミングの両方が重要です。
どちらも整っているほど、買い手から選ばれやすく、好条件での譲渡につながります。
譲渡しやすい接骨院(整体院)
- 売上・来院数が安定している
- スタッフマニュアルが整っている
- 経営データが整理されている
- 保険請求や労務管理が適正
- 通いやすい立地にある
- 法人化されている
一般的に、院長の技術や人脈に依存して運営されている接骨院(整体院)は、買い手からの関心を集めにくい傾向があります。一方で、仕組みやスタッフ体制によって安定して運営できる院は、候補先が増え、M&Aの成功率も高まります。
そのため、「属人性が低く、継続的に運営できる院」を整えておくことが重要といえるでしょう。
譲渡しやすいタイミング
- 売上が安定または伸びている
- 院長が一定期間、引き継ぎ可能
- 院長の年齢が比較的若い
- 不要資産が整理されている
- M&A市場の動きを把握している
一般的に、売上が安定している時期や、院長が一定期間引き継ぎに関われる体制が整っている院は、買い手からの評価が高くなります。また、不要な資産や支出を整理し、財務状況が明確になっていることも重要なポイントです。
業績が好調な段階での売却は、条件交渉を有利に進めやすく、結果として高値での成約につながりやすい傾向があるため、「まだ続けられる」と思える時期に動くことが最も理想的なタイミングといえるでしょう。
接骨院(整体院)の価格(企業価値評価)
接骨院(整体院)の企業価値は、院が今後も事業を継続できる力を表す「事業価値」と、施術以外の資産による「非事業価値」の2つから構成されます。
事業価値とは
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 事業価値 | 院の運営を前提として、将来的に生み出す利益やキャッシュフローを基準に算出される価値。 |
| 非事業価値 | 事業とは直接関係のない資産(余剰現金・有価証券・オーナー私用の車両や保険契約など)。 |
接骨院(整体院)のように、スタッフの技術と患者さまとの信頼関係で成り立つ労働集約型ビジネスでは、純粋な「利益」を中心に企業価値を判断するケースが一般的です。その判断に使われるのが「EBITDA倍率法」という方法です。
EBITDAとは
EBITDAとは、院の「本業でどれだけ利益を出しているか」を見るための数字です。
税金や借金の返済、設備の減価償却などの影響を抜いて考えるので、実際の稼ぐ力を表します。
EBITDA = 営業利益 + 減価償却費
EBITDA倍率法とは
EBITDAに「業界の平均倍率(マルチプル)」をかけて、院の価値を出す方法です。
企業価値 = EBITDA × 倍率
たとえば、1年間のEBITDAが1,000万円で、倍率が5倍なら、企業価値は 5,000万円 になります。
この金額がおおまかな「院の価格」となります。
近年のM&A実務では、整骨院・接骨院のEBITDA倍率は3〜5倍程度が多いといわれています(※収益力・立地・規模で変動)。
安定した経営・複数店舗展開 → 4〜5倍前後個人経営・収益変動が大きい → 2〜3倍前後
接骨院(整体院)M&Aの スキーム
接骨院(整体院)のM&Aでは、経営権の移譲と譲渡対価(売却価格)が最も重要なポイントです。どのスキームを選ぶかによって、手続きの流れや金額の考え方が大きく変わります。
経営権の移譲の仕組み
経営権の渡し方は、主に「株式譲渡」と「事業譲渡」の2つに分かれます。経営権の引き渡しは「クロージング日」と呼ばれる日に行われ、契約書の締結・代金支払い・引継ぎ書類の受け渡しが同時に実施されます。株式譲渡の場合は、株主名簿の書き換えや役員登記変更まで行うのが一般的です。
| スキーム | 経営権の移譲方法 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 株式譲渡 | 株主(オーナー)が持つ株式をすべて買い手に渡す | 株主が変わるだけで法人はそのまま。スタッフ・患者さま・契約関係を引き継げる。手続きがシンプル。 |
| 事業譲渡 | 院の設備や契約など、事業部分だけを譲渡 | 法人は変わるが、運営ノウハウや地域ブランドを買い手が引き継ぐ。個人院で多い。 |
譲渡対価(売却価格)の考え方
売却価格は、「時価純資産+のれん代(営業権)」で構成されます。この「のれん代」は、院の営業利益(EBITDA)の1〜3倍が目安とされています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 時価純資産 | 院の資産(現金・機器・内装など)から負債を差し引いた実際の資産額。 |
| のれん代(営業権) | その院が持つ「稼ぐ力」や「患者さまとの信頼」「立地価値」など、目に見えない価値。 |
買収額支払方法一覧
接骨院(整体院)のM&Aでは主に以下の支払方法が使われます。
| 支払方法 | 内容 | 売主のメリット | 売主のデメリット |
|---|---|---|---|
| 株式譲渡(株式売却益) | 株式会社形態の院で株式を譲渡 | 売却益は譲渡所得として課税(約20〜27%)で税率が比較的低い | 法人化していない場合は該当せず |
| 事業譲渡(設備・内装・のれん譲渡) | 個人事業主院など事業の資産を譲渡 | 事業資産譲渡益として課税 | 税率は総合課税で高くなる可能性あり |
| 退職金支給 | 法人格があり役員退任がある場合 | 役員報酬より低い退職所得税率(約25〜28%)で税負担軽減 | 医師など歯科で多いが、接骨院では限定的 |
| 分割払い・アーンアウト | 業績に応じて分割で支払う | 売主リスク軽減、業績次第の追加報酬可能 | 分割期間中の経営不振リスク |
M&A後の働き方
接骨院(整体院)のM&Aでは、譲渡後にどのような働き方を選ぶかが非常に重要です。
「経営から完全に離れたい」という方もいれば、「施術は続けたい」「スタッフのサポートをしたい」という方もおり、選択肢は一つではありません。買い手にとっても、院長がすぐに引退してしまうと、スタッフや患者さまへの影響が大きくなるため、段階的な引継ぎや勤務継続が望まれるケースが多く見られます。
経営責任を手放し、施術に専念する
「経営や人の管理には疲れたが、施術は続けたい」という院長は少なくありません。
M&Aによって経営や採用、会計などの負担を買い手側が引き受け、院長自身は現場施術に専念する形です。
経営リスクから解放されつつ、自分のペースで施術を続けられるため、「以前より患者さまにしっかり向き合えるようになった」という声も多く聞かれます。
新店舗の立ち上げやグループ展開に関わる
複数院を経営していたり、経営拡大に意欲のある先生の中には、M&Aを通じて大手グループに参加し、買い手企業の資本を活かして新店舗を立ち上げるケースもあります。
経営の中心として複数院を統括するポジションに就くなど、「プレイヤーからプロ経営者へ」と働き方を広げることも可能です。
個人経営では難しかった規模拡大を実現できるケースも増えています。
引継ぎを経て完全引退する
体力面やご年齢、家族の事情などから、譲渡後に完全引退を選ぶ院長もいます。
ただし、譲渡後すぐに退くと、患者さまやスタッフの離脱リスクが高まり、買い手からの評価も下がる傾向があります。
そのため、多くのケースでは一定期間の引継ぎ勤務(3〜6か月程度)を行うことで、スムーズな運営を実現しています。
段階的に現場を離れ、安心して院を託す形が理想的です。
M&A後も、譲渡した院で柔道整復師として働き続けることは、スタッフや患者さまにとっても大きな安心感につながります。
最近では「現場には関わりたいが経営からは離れたい」「地域に貢献しながら自分の時間も確保したい」という院長が増えており、M&Aをきっかけに自分に合った働き方を再設計するケースが多くなっています。
経営から一歩引くのか、グループで再チャレンジするのか。M&Aは、引退ではなく「次のキャリアを描く選択肢」として活用されつつあります。
よくあるご質問
- 院を売却したらすぐに引退できますか?
- 買い手側からすると、院長がすぐにいなくなるとスタッフや患者さまへの影響が大きく、運営が不安定になりがちです。
そのため、売却後も半年〜2年ほど引継ぎ勤務を行うケースが一般的です。勤務日数や関与度合いは話し合いで柔軟に決められます。
- スタッフの雇用はどうなりますか?
- 売却主のご意向にもよりますが、多くの場合、M&A後もスタッフの雇用や待遇はそのまま継続することを優先的に考えています。
給与や勤務条件をすぐに変えることはなく、買い手も現場の安定を最優先にすることを推奨しています。
- 自分で退職金を受け取るのと何が違いますか?
- 退職金は、自身が経営者を退任したタイミングで支給されます。
一方、M&Aでは「株式譲渡益」などの形で売却益を受け取ることができ、税率も約20%前後と比較的低いのが特徴です。
退職金と比べて、より効率的に資産を残せる場合があります。
- 売却後も働くことはできますか?
- はい、可能です。
買い手からしても、院のことを一番理解しているのは元院長です。そのため、経営の責任を離れた上で、施術者やアドバイザーとして引き続き勤務するケースが多く見られます。「経営のプレッシャーから離れて、施術に専念できるようになった」という声も多いです。
- 売却の準備はいつから始めればいいですか?
- 引退を考える2〜3年前から準備を始めるのが理想です。
実際のM&A手続きは半年〜1年ほどかかるため、将来的に譲渡を検討している場合は、5年前くらいから経営の整理や数値管理を始めておくとスムーズです。
- 節税をしていても問題ありませんか?
- 問題ありません。
接骨院のM&Aでは、「EBITDA(償却前利益)」という実質的な収益力をもとに価値を算定します。個人の節税や経費分は、評価時に足し戻し処理が行われるため、価格にマイナスの影響はほとんどありません。
- 仲介会社は専任と非専任、どちらがいいですか?
- 複数の仲介会社に依頼すると、同じ案件が市場に出回りすぎて買い手から価格交渉されやすくなる傾向があります。
そのため、1社の仲介会社と専任契約を結ぶほうが、条件交渉や情報管理がしやすく成功率も高いです。
- 「資本提携のご案内」という手紙が届きました。信じていいですか?
- 「特定の企業からの指名です」といった手紙の多くは、仲介業者による営業DMです。
実際に買い手からの正式依頼で送られているケースは稀で、内容が曖昧な場合は慎重に対応することをおすすめします。
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接骨院(整体院)のM&A仲介サービス
当社は、接骨院・整体院に特化したM&A仲介を専門に行っています。
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まとめ
接骨院(整体院)のM&Aでは、「どのタイミングで」「どんな形で」引き継ぐかを自由に決められます。
すぐに引退することも、現場に残って施術を続けることも可能です。
大切なのは、院の未来と自分の働き方の両方に納得できる形を選ぶことです。
ご相談はすべて秘密厳守・無料で承っております。
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まずはお気軽にご連絡ください。
