接骨院の譲渡時、高額な医療機器の「リース契約」はどうなる?引き継ぎの注意点

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そもそもリース中の機器は「M&Aで譲渡できる資産」なのか

接骨院を譲渡する際、院内に置かれている物療機器がそのままリース中であるケースは少なくありません。しかし、リース中の機器は、売り手が自由に譲渡できる資産ではないという点に注意が必要です。院内にあるからといって、内装や他の設備と同じように扱ってしまうと、後々のトラブルに直結します。まずは、なぜ単純に引き継げないのか、その理由から確認していきましょう。

所有権はリース会社にある

毎月きちんとリース料を支払っていても、その機器そのものは自院の持ち物にはなっていません。干渉波治療器や超音波治療器、ウォーターベッドといった高額な物療機器は、契約上あくまでリース会社の資産であり、使用させてもらっているにすぎない立場です。

そのため、内装や什器と一緒くたにして、他の設備と同じ感覚で買い手にそのまま引き渡すことはできません。契約者としての地位や所有権を何らかの形で整理しない限り、機器だけを勝手に譲渡対象へ含めることは認められないというのが実情です。

無断で引き継いでしまった場合に起こり得ること

「機器が現地に残っているのだから、そのまま渡してしまえば済む」という考えで手続きを飛ばしてしまうと、後になって深刻な問題を招きかねません。

まず、他人の所有物を無断で第三者へ渡す行為は、業務上横領といった刑事責任にまで発展するおそれがあります。加えて、リース会社に無断での引き継ぎが発覚すれば契約違反とみなされ、残っているリース料を一括で請求される事態も想定されます。

さらに厄介なのは、名義変更の手続きを済ませないまま話を進めてしまった場合です。契約上の名義や連帯保証人は旧オーナーのまま残るため、新しい経営者が支払いを滞らせると、督促は売り手であった側に届くことになります。買収監査の段階でこうした未整理のリース債務が見つかれば、契約そのものが白紙に戻ったり、損害賠償を求められたりするケースも珍しくありません。

接骨院M&Aでリース契約を買い手へ引き継ぐ3つの方法

リース中の機器を譲渡の対象に含めたい場合、それぞれ手続きの流れやリスクが異なるため、自院の状況に合ったものを選ぶことが大切です。ここでは、実務でよく用いられる3つの方法を紹介します。

リース会社の承諾を得て契約者名義を変更する

一つ目は、リース契約そのものを買い手へ引き継がせる方法です。リース会社に事情を伝え、承諾を得たうえで契約者の名義を売り手から買い手へ切り替えます。この場合、買い手企業は財務状況などについてリース会社の審査を受けることになり、その結果次第で手続きの可否が決まります。

見落とされがちなのが、連帯保証人の扱いです。売り手側の代表者が個人保証を付けているケースは多く、買い手の審査が通れば保証人も入れ替わるのが原則ですが、買い手の信用力に不安がある場合などは、旧オーナーの保証がそのまま残ってしまうこともあります。この状態で買い手が支払いを滞らせると、督促は旧オーナーに向かうため注意が必要です。また、審査や名義変更には一定の時間がかかるため、譲渡全体のスケジュールに影響することも念頭に置いておく必要があります。

残債を一括清算してから引き継ぐ

売り手が残っているリース料をまとめて支払い、機器の所有権を自社へ移してから買い手へ渡す方法です。所有権が移れば通常の備品と同じように自由に譲渡でき、トラブルも起きにくいため、実務ではこの方法がよく選ばれます。ただし、清算費用を譲渡価格に反映させておかないと、売り手側の負担が増えるため注意が必要です。

引き継がず、買い手が新規契約を結び直す

三つ目は、今の契約を一旦終わらせ、買い手が自分の名義で改めてリースを組み直す方法です。売り手が残債を精算して機器を返却し、買い手が別の機器を新規契約するのが基本ですが、撤去・配送費用は売り手負担となり、経済的な損失も生じやすくなります。

M&Aの交渉でリース会社と確認しておきたいポイント

リース機器の引き継ぎ方が決まったら、次に必要になるのがリース会社とのやり取りです。契約書のどこを確認すればよいのか、そしていつ相談を始めるべきかを把握しておかないと、譲渡の直前になって手続きが間に合わないという事態にもなりかねません。ここでは、交渉を進めるうえで押さえておきたいポイントを整理します。

契約書でまず確認すべき条項

「購入したつもりが実はリース契約だった」という思い違いは珍しくありません。まずは手元の書類を整理し、購入とリースを正しく仕分けることから始めましょう。あわせて確認したいのが、残りの契約期間、途中で解約した場合にかかる費用の算出方法、清算後に所有権が自分側へ移るのかどうか、そして契約時に個人保証をつけていないかという点です。これらを把握しておくだけで、その後の交渉が格段に進めやすくなります。

リース会社への相談は早めに動く

準備が整ったら、次はリース会社との具体的なやり取りです。買い手への契約引き継ぎが認められるか、その際に自分の保証が外れるのか、それとも残ってしまうのかは、必ず書面で確認しておく必要があります。保証が残ったまま買い手が支払いを滞らせれば、督促は自分に届くことになるため軽視できません。また、これらの確認や審査には時間がかかるため、譲渡の話が具体化してから動き出すのでは遅く、早い段階で相談を始めておくことが欠かせません。

リース機器の扱いがM&Aの譲渡価格にどう影響するか

リース中の機器は、あるからといって院の資産価値に上乗せされるわけではありません。それどころか、扱い方を誤ると譲渡価格そのものを押し下げる要因になってしまいます。ここでは、リース機器がなぜ評価額に反映されにくいのか、そして交渉を有利に進めるために事前にどこまで洗い出しておくべきかを見ていきます。

リース中の機器は評価額に含まれにくい

リース中の機器は、院の資産価値を算定するうえでプラスに働くどころか、むしろ譲渡価格を下げる原因になりえます。所有権が自院にない以上、資産としてカウントされないのは当然として、買い手側から見ればその機器は「毎月の支払い義務を引き継がされるもの」でしかありません。結果として、残っているリース料の総額は負債として扱われ、提示される譲渡価格からその分がそのまま差し引かれることになります。

デューデリジェンス(契約精査)の段階で洗い出しておく

厄介なのは、リース契約の多くが決算書上に表れてこないという点です。買い手による契約精査の段階でこうした未開示のリース債務が見つかると、「隠していたのではないか」という不信感につながり、価格の大幅な引き下げや交渉決裂を招きかねません。また、名義変更にあたっては買い手の信用力によって自分の連帯保証が外れないケースもあるため、事前に確認しておく必要があります。解約時にかかる違約金や撤去費用も含め、早い段階で数字を洗い出しておくことが、後々のトラブルを避けるために重要です。

まとめ

リース中の機器は、所有権がリース会社にある以上、そのまま自由に譲渡できるものではありません。院内にあるからといって内装や他の設備と同じ扱いをしてしまうと、無断譲渡による法的リスクや、譲渡価格の減額、最悪の場合は契約破談にまでつながるおそれがあります。

リース契約者の名義変更、残債の一括清算、契約を結び直すという3つの方法にはそれぞれ手続きや注意点が異なり、契約書の確認とリース会社への早めの相談が、譲渡を円滑に進めるための前提になります。

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