整体院を居抜きで譲渡するには?退店コストを抑えて賢く売却・撤退するポイント

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【居抜き譲渡・事業譲渡・株式譲渡】3つの違いを理解しよう

整体院の売却や撤退を考える際は、まず自院に合った方法を選ぶことが大切です。一口に「譲渡」といっても、何を引き継ぐかによって手続きの内容も税負担も大きく異なります。自分の状況に合った方法を選ぶためにも、3つの違いを事前に理解しておきましょう。

居抜き譲渡は「内装・設備のみ」を引き継ぐ

居抜き譲渡とは、施術ベッドや受付カウンター、空調設備といった「院の箱」だけを売買する方法です。患者情報やスタッフ、院のブランドは含まれないため、買い手は内装と設備を活かしながらも、集客やスタッフ採用はゼロからスタートすることになります。個人事業主・法人いずれも活用できる方法で、初期費用を抑えたい買い手と、退店コストを回避したい売り手のニーズが合致しやすい選択肢です。

「普通の居抜き物件を借りる」とどう違うのか

居抜き物件と聞くと、「設備が残っている空き店舗をそのまま借りる」イメージを持つ方も多いかもしれません。しかし整体院M&Aにおける居抜き(造作譲渡)は、単なる居抜き賃貸とは仕組みが異なります。
通常の居抜き賃貸は大家との賃貸借契約だけで入居できますが、造作譲渡では大家との賃貸借契約に加え、前オーナーから内装・設備を買い取るための「造作譲渡契約」も別途必要になります。買い取った時点で設備の所有権は新オーナーに移る点も、ただ借りるだけの賃貸とは大きく異なります。また、造作譲渡契約は不動産会社が仲介してくれないケースもあるため、譲渡対象の設備や状態を書面でしっかり残しておくことがトラブル防止の観点から重要です。

事業譲渡は「患者・スタッフ・ブランドごと」引き継ぐ

事業譲渡は、内装・設備に加えて、患者情報(カルテ)・スタッフの雇用・院の名称・SNSやウェブ媒体といった「今の売上を支えているもの」をまるごと引き継ぐ方法です。整体院・整骨院のM&Aにおいて最も多く選ばれる方法であり、買い手にとっては既存の顧客基盤をそのまま引き継げるため、開業直後から安定した収益を見込めるメリットがあります。一方、スタッフとの雇用契約の締結し直しや保健所への届け出など、事務手続きが多くなる点と、売却益に消費税や累進課税が適用される場合がある点は把握しておく必要があります。

株式譲渡は「会社の経営権ごと」移す

株式譲渡は、会社の株式を売却することで経営権ごと買い手に引き渡す方法です。法人にのみ選択できる方法で、個人事業主は利用できません。会社に紐づく契約や許認可・スタッフの雇用関係がそのまま存続するため、事業譲渡と比べて名義変更などの手続きが大幅に少なく済むのが特徴です。税率は約20%の一律課税で消費税もかからないため、同じ売却価格でも手取り額を多く残しやすい方法と言えます。ただし、売却益が非常に大きくなる場合はミニマムタックス(高所得者向けの追加課税制度)が適用され、実質的な税率が上がるケースもあるため、売却額が大きい場合は専門家への相談をおすすめします。また、会社が抱える借入金や簿外債務(未消化の回数券など)もすべて引き継ぐことになるため、買い手による詳細な事前調査が欠かせません。

整体院の居抜き譲渡が選ばれる理由

整体院・整骨院のM&Aにおいて、居抜き譲渡は売り手・買い手の双方にとってメリットが大きい方法として選ばれています。「初期費用を抑えたい」「退店コストをかけずに撤退したい」という両者のニーズが合致しやすいことが、居抜き案件が多く流通している背景にあります。

買い手にとってのメリット|初期費用を抑えてすぐに開業できる

ゼロから物件を探して内装工事を行う場合、施術ベッドや治療機器の購入も含めると、開業までに多額の初期投資が必要になります。居抜き譲渡であれば、すでに整った内装と設備をそのまま活用できるため、初期費用を大幅に抑えることができます。また、内装工事の期間が不要な分、契約後すぐに開業できるスピード感も大きな魅力です。特に競争が激しい都市部では、好立地の物件をタイミングよく確保できること自体に価値があり、居抜きで素早く参入できる点は戦略的なメリットにもなります。

売り手にとってのメリット|原状回復費用など退店コストを回避できる

通常、テナントが退去する際には内装をすべて解体して元の状態に戻す「原状回復」の義務があり、その費用は数百万円に上るケースも少なくありません。さらに、工事期間中や解約予告期間中に発生する家賃も無視できないコストです。居抜き譲渡を活用すれば、次のオーナーに内装・設備をそのまま引き継いでもらえるため、こうした退店コストをまるごと回避できます。廃業を選んだ場合に必要となる設備の廃棄処分費用も不要になるため、費用負担を最小限に抑えながらスムーズに撤退できる点が、売り手にとって居抜き譲渡を選ぶ大きな理由となっています。

居抜き譲渡のデメリットと見落としがちなリスク

初期費用や退店コストを抑えられる居抜き譲渡ですが、通常の物件契約にはない特有のリスクも存在します。取引後のトラブルを防ぐためにも、事前にしっかり把握しておきましょう。

【賃貸借契約と造作譲渡契約】2つの契約が必要になる

居抜き譲渡では、大家との賃貸借契約に加えて、前オーナーから内装・設備を買い取るための造作譲渡契約の2つを締結する必要があります。一般的な不動産会社は賃貸借契約しか仲介しないケースが多く、造作譲渡については当事者同士での交渉になることも少なくありません。口頭だけのやり取りで済ませてしまうと後々のトラブルにつながるため、何をいくらで譲り受けるか、責任の所在はどこかを必ず書面で残すことが重要です。

大家の許可が下りない・家賃が上がるケースがある

居抜き譲渡を成立させるには、大家の承諾が必須です。許可が下りたとしても、テナントの入れ替わりを機に家賃や保証金が値上げされるケースがあります。造作譲渡の交渉と並行して、新たな賃貸条件を早めに確認しておくことが大切です。

引き継いだ設備が故障したときの費用負担

造作譲渡が成立した時点で設備の所有権は新オーナーに移るため、引き継いだ後に故障が発生した場合の修理費用は原則として自己負担となります。内見時に設備の状態や購入時期を確認し、引き渡し後の故障時の責任範囲を契約書に明記しておくことでトラブルを防げます。

前オーナーの原状回復義務の引継ぎ

居抜きで入居すると、前オーナーが負っていた原状回復義務もそのまま引き継ぐことになります。将来退去する際には、自分が持ち込んだ設備だけでなく、前オーナーが作った内装まで撤去しなければならないケースもあり、想定外のコストが発生するリスクがあります。契約前に原状回復の範囲を大家と明確に取り決めておきましょう。

整体院ならではのM&A特有の注意点

整体院・接骨院のM&Aには、他の業種にはない固有のリスクがあります。売却価格や成約の可否に直結するポイントを事前に把握し、対策しておくことが重要です。

未消化の回数券は「隠れ負債」になる

回数券の未消化分は、帳簿に載らない「隠れた負債」としてM&Aの評価に影響します。買い手にとっては現金を受け取れないまま施術義務だけを引き継ぐリスクがあるため、未消化分の金額次第では譲渡価格の引き下げや破談につながることもあります。日頃から有効期限を設けるなど、未消化リスクを最小限にコントロールしておくことが大切です。

院長依存の体制は売却価格を下げる

「院長がいなければ患者が来ない」という属人的な体制は、買い手から敬遠されます。買い手が重視するのは、オーナー交代後も売上と運営が安定して維持できるかどうかです。担当制の見直しやカルテ共有・技術のマニュアル化を進め、誰が施術しても一定の品質を保てる仕組みを整えておくことが、評価額を高めることにつながります。

国家資格者が残るかどうかが評価を左右する

有資格者の採用難が続く中、柔道整復師や鍼灸師がM&A後も在籍し続けるかどうかは、譲渡価格や成約の可否を大きく左右します。スタッフの定着率が高く安定して採用できている院は、それ自体が強いアピールポイントとなり、のれん代の上乗せ要因にもなります。

保険診療の適正性も買い手のチェック対象になる

保険請求の内容は、買収監査で必ず確認される項目です。不正や不適切な請求が発覚した場合、買収後に指定取り消しや返還請求を受けるリスクを負うのは買い手となるため、グレーな請求が疑われる院は敬遠されます。コンプライアンスの徹底と自費診療比率の向上が、健全な売却につながります。

行政手続きのタイミングを事前に把握しておく

事業譲渡で開設者が変わる際、地方厚生局への受領委任申請は申請当日から保険適用となるため、保健所への開設届を先に済ませた上でスケジュールを組む必要があります。手続きの順番を誤ると保険診療ができない空白期間が生じるリスクがあるため、関係機関への早めの確認と調整が欠かせません。

居抜き譲渡がおすすめのケース

居抜き譲渡は、顧客やスタッフを引き継がず「場所と設備だけ」を売買するという特性上、状況によっては事業譲渡よりも合理的な選択肢になります。以下のようなケースに当てはまる方に特におすすめです。

売り手側

  • ・スタッフが退職し、すでに営業継続が難しくなっている
  • ・赤字が続いており、買い手が見つかるまでの資金的な余裕がない
  • ・原状回復費用など、高額な退店コストをどうしても避けたい

買い手側

  • ・自社で有資格者やスタッフの確保がすでにできている
  • ・前オーナーの運営スタイルを引き継がず、独自のコンセプトで開業したい
  • ・初期投資を抑えて、できるだけ早く開業したい

まとめ|居抜き譲渡は「目的に合った活用」を

居抜き譲渡は、うまく活用すれば売り手・買い手の双方にとってメリットの大きい方法です。ただし、通常の物件契約とは異なるルールや落とし穴も多いため、「何となく安く済みそうだから」という理由だけで進めてしまうと、後々思わぬトラブルにつながることもあります。

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