接骨院の事業承継で最大の壁となる「患者離れ」への不安
「そろそろ引退を考えたいが、自分が抜けたら患者さんは来てくれなくなるのではないか?」 「M&Aで経営者が変わっても、スタッフや患者さんはついてきてくれるだろうか?」
長年、地域医療を支えてきた接骨院の経営者様にとって、事業承継やM&A(第三者への譲渡)を検討する際、最も大きな壁となるのが「患者離れ」への不安ではないでしょうか。
接骨院経営は、設備や立地以上に「人(先生)」への信頼で成り立っています。そのため、一般的な店舗の売買に比べて、経営者が変わることによる患者減少のリスクが高いと言われています。
しかし、適切な準備と対策を行えば、そのリスクを最小限に抑え、大切な患者様やスタッフを次の世代へ引き継ぐことは可能です。
本記事では、接骨院のM&Aにおける「患者が離れるリスク」の正体と、その信頼を守り抜くための具体的な対策について解説します。
なぜ接骨院のM&Aで「患者が離れる」のか?3つの主要リスク
接骨院のM&Aにおいて、買い手企業も売り手である院長先生も最も恐れているのが、譲渡後の患者数の激減です。なぜ接骨院はここまで「患者離れ」が起きやすいのでしょうか。その主な要因は以下の3点に集約されます。
院長や特定の施術者への「属人性が高い」
これが最大の要因です。多くの患者様は、院の看板や設備に通っているのではなく、「院長先生のゴッドハンド」や「○○先生の人柄」に信頼を寄せて通院しています。接骨院は、患者様の体に直接触れるビジネスのため、他の業種に比べて心理的な結びつきが非常に強くなります。「あの先生がいるから行く」という動機で通っている患者様にとって、M&Aに伴い院長や主要なスタッフが退職・交代することは、通院する理由そのものを失うことに等しいのです。特に、院長一人で施術のほとんどを回している状態や、院長への指名が集中している院の場合、譲渡と同時に患者様がごっそり離れてしまうリスクが高まります。
施術方針や院内の「雰囲気」の変化
経営者が変われば、多少なりとも院の方針は変わります。しかし、その変化が急激であったり患者様への説明なしに行われたりすると、不安や不信感が生じ、他院に流れてしまうことは少なくありません。
- 施術の技術や手順が変わった
- アットホームな雰囲気が、ビジネスライクな対応に変わった
- 料金体系や予約システムが変更された
- 受付の対応が変わった
スタッフの退職による「負の連鎖」
M&Aによる経営体制の変更は、患者様だけでなく働いているスタッフにとっても大きな不安材料です。「新しいオーナーとうまくやれるだろうか」「給料や待遇が悪くなるのではないか」という不安から、M&Aを機にスタッフが退職してしまうケースは少なくありません。ここで怖いのが「スタッフの離職=そのスタッフを支持していた患者様の離脱」というケースです。 特に、患者様と密にコミュニケーションを取っていた受付スタッフや指名の多い勤務柔道整復師が辞めると、そのスタッフを慕っていた患者様も一緒に離れてしまう可能性が非常に高くなります。
患者離れだけではない!M&Aを失敗させるその他のリスク
接骨院の譲渡においては、患者様が離れるリスク以外にも、法務・労務面でのトラブルがM&Aの成否や譲渡価格に大きく影響します。
競業避止義務の不徹底による顧客流出
M&Aで院を売却した元オーナーが、譲渡後にすぐ近くで新しい接骨院や整体院を開業してしまうリスクです。 もし元院長が近隣で開業すれば、これまで信頼関係を築いてきた患者様は、新しいオーナーの院ではなく、元院長の新しい院へ流れてしまいます。これでは買い手にとってM&Aの意味がありません。契約書において競業避止義務(一定期間・一定地域での競業禁止)を明確に定めておかなければ、トラブルの原因となります。
保険請求・療養費に関するリスク
不正請求の履歴
過去に架空請求や水増し請求などの事実があった場合、買収後にそれが発覚すると行政処分や返還請求を受けることになります。これは買い手にとって致命的なリスクとなるため、デューデリジェンス(買収監査)で厳しくチェックされます。
償還払いへの制度変更
2024年以降、長期・頻回な施術を受ける患者様などに対して、「受領委任払い(窓口一部負担)」から「償還払い(窓口10割負担で後から還付)」への変更を促す仕組みが強化されています。窓口での一時的な負担増は患者様にとってハードルが高く、これに伴う来院頻度の低下も新たなリスクとして認識しておく必要があります。
労務管理の不備
「うちはアットホームだから残業代はあやふやにしていた」「社会保険は未加入だった」といった労務管理の甘さは、M&Aの場面では簿外債務(帳簿に載っていない借金)とみなされます。 買い手がこのリスクを引き継ぐことを嫌がり、M&Aが破談になったり、譲渡価格が大幅に減額されたりする原因となります。
患者離れを防ぐには?M&A成功のための対策
接骨院のM&Aは、単なる「店舗と設備の売買」ではなく、「患者様との信頼関係(のれん)の引き継ぎ」です。患者離れを防ぎ、スムーズな譲渡を実現するためには、以下の対策が不可欠です。
十分な引き継ぎ期間(PMI)を確保する
「今日で売却したので、明日からは新しい院長です」という急な交代は、最も患者様を不安にさせます。 M&A成立後も、前院長がすぐに引退するのではなく、数ヶ月から1年程度は顧問や施術者として現場に残り、徐々にバトンタッチをしていく期間(PMI)を設けることが推奨されます。新旧体制が自然に切り替わることで、患者様も安心して通院を継続できます。
施術方針・理念のすり合わせ
買い手企業に対して自院の施術方針や理念、患者様の層について深く理解してもらうことが重要です。 「M&A直後は、看板も内装も施術メニューも極力変えない」という戦略をとるケースも多くあります。まずは既存の患者様に安心してもらい、信頼関係が構築できてから、徐々に新しいメニューや方針を導入していくソフトランディングを目指すといいでしょう。
スタッフとの信頼関係の構築
M&Aの情報を公開するタイミングで、スタッフ一人ひとりに対して丁寧に説明を行いましょう。 特に「雇用条件は維持されるのか」「自分たちの立場はどうなるのか」という不安を解消することが最優先です。スタッフが「このままここで働きたい」と思えれば、彼らが患者様に対してポジティブな声かけを行ってくれるようになり、患者離れの防波堤となってくれます。
カルテ・顧客情報の適切な引き継ぎ
単にカルテを引き継ぐだけでなく、患者様一人ひとりの施術以外の情報も引き継ぎましょう。 会話の中で出た趣味の話、家族構成、痛みの感じ方の癖など、数値化できない情報こそが信頼の証です。これらの情報が新体制でも共有され、「先生が変わっても、私のことをよく分かってくれている」と患者様に感じてもらえれば、離脱リスクは大幅に下がります。
まとめ|M&Aの不安は「準備と対話」で乗り越えられる
接骨院の譲渡において、患者が離れてしまうリスクはゼロではありません。しかし決して避けられない事態ではなく、事前の準備と配慮によって十分にコントロールできる課題といえます。
- 属人性を薄めるための時間をかけた引き継ぎ
- スタッフと患者様への誠実なコミュニケーション
- 法令遵守とクリアな経営体制への転換
これらを意識することで、先生が長年築き上げてきた地域からの信頼を形を変えて未来へとつないでいけます。
ご自身の引退後も、患者様が安心して通い続けられる院であり続けるために。M&Aを検討する際は、接骨院業界に精通した専門家と一緒に患者様とスタッフを守る戦略を立てることから始めましょう。
Wellness M&Aでは、接骨院・整体院に特化した支援を行い、経営者の皆様が抱えるお悩みに寄り添ったサポートを徹底しています。
患者離れへの懸念やスタッフへの説明方法など、多くのご相談に向き合ってきた私たちだからこそ、その不安に対する的確なアドバイスもお任せください。
まずは無料相談から。 将来に向けたお考えや現状の不安など、どのようなことでもお気軽にお聞かせください。
